ECサイトを開設する際、まず考えなければならないことは、ECサイトの運用方法です。主な方法としては、「自社EC」を立ち上げるか、「モール型EC」に出店するか、あるいは「その両方を運営する」の3つがあります。
今回は、それぞれの運営方法についてメリット・デメリットを比較し、選ぶ際のポイントをご紹介します。
ECサイトを開設する際の参考にしていただければと思います。
ECサイトの運営方法
自社ECサイトとは?
自社サイトECとは、自社で独自ドメインを取得し、ネットショップを運営するサイトのことを言います。企業単独のショッピングサイトで、大手では「ユニクロ」、「アップル」、「無印良品」。他には「北欧、暮らしの道具店」、「NOCE」などのオンラインショップがあげられます。
自社ECサイトの構築方法には、代表的なものとして、次の4つがあります。
- フルスクラッチ
- パッケージ
- オープンソース
- ASP
費用 (目安) | 製作期間 | メリット・デメリット | |
フルスクラッチ | 500万円~ | 数ヶ月~半年 |
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パッケージ | 100万円~ | ~数ヶ月 |
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オープンソース | 30万円~ | 1~2ヶ月 |
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ASP | 無料~100万円 | 数日~1ヶ月 |
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それぞれの特徴を説明していきます。
<フルスクラッチ>
フルスクラッチは、ゼロからECサイトを構築する方法です。既存のソフトウェア等を使用しないので、大変多くのコストと時間がかかりますが、制限なく自社の要件に合わせたシステムを構築することができます。システムが古くなるため、数年に一度はシステムを刷新する必要があります。
<パッケージ>
パッケージは、ベースとなるソフトウェアをパッケージ会社から購入する方法です。ECサイトに必要な機能が最初からそろっていますが、通常は自社用に追加カスタマイズを行うのが一般的です。フルスクラッチと同様に、数年に一度システムを刷新する必要があります。
▼パッケージの代表例
・ecbeing
知名度が高く、1200サイト以上で導入されています。カスタマイズ性も高いため、ニーズに合わせて追加で機能を拡張できます。24時間サポートでセキュリティも万全です。
・EC-Orange
POSシステムとデータ連携が可能です。多言語でECサイトを表示でき、管理画面も多言語に対応しています。オープンソースのEC-CUBEのカスタマイズパッケージ版です。
・Commerce21
長期的にサポートを行い、顧客に合わせたECサイト構築が可能です。カスタマイズ性が高く、企業独自の機能も追加しやすいのが特徴です。
<オープンソース>
オープンソースは、インターネット上に無料で公開されているパッケージを指します。ライセンス費用がかからないので、比較的安価にECサイトを構築することができる反面、サイト構築やセキュリティ対策などは自社で行う必要があるため、ある程度の技術力が必要です。
▼オープンソースの代表例
・EC-CUBE
国産のオープンソース型サービスで国内シェアNo.1となっています。国内最大級のECパートナーネットワークを持っているのが特徴です。カスタマイズ性が高く、オリジナリティあるECサイトが構築できます。
・Magento
世界規模で展開されているサービスです。多言語、他通貨での決済、国内外への配送に対応しているため、海外に向けた販売を行う企業に向いています。
<ASP>
ASPは、インターネットを通じて構築環境を利用(レンタル)する方法で、最も手軽にECサイトを構築することができます。非常に低価格なうえ、常に最新の機能を利用することができますが、拡張性がなく、外部システムと連携できないといった欠点があります。最近では、SaaSモデル、クラウドサービスともいわれています。
▼ASPの代表例
・MakeShop
流通総額業界No.1を誇るサービスです。機能が豊富で、あらゆるニーズに対応できる点が特徴です。充実したサポート体制も整っています。
・カラーミーショップ
国内最大級のネットショップ開業・作成サービスです。使用料が安価で、ショップの売上規模が大きくなっても、コストを安く抑えることができます。また、アプリを追加することでECサイトの成長に応じた施策を行うことが可能です。
・BASE
販売手数料はかかりますが、初期費用/月額使用料が無料で、手軽にショップが作れるのが特徴です。デザイン・機能が充実しており、300,000店舗以上が導入している人気のネットショップ構築サービスです。
・store.jp
BASEと同様、初期費用/月額使用料が無料で販売手数料のみがかかるフリープランがあります。月額料金が発生するスタンダードプランでは、手数料が安くなるなどのサービスがあります。
モール型ECとは?
モール型ECとは、インターネット上におけるショッピングモールのようなもので、多種多様なショップが出店しているECサイトのことを指します。
モール型ECには次の2つの種類があります。
- マーケットプレイス型(Amazon)
- テナント型(楽天市場、Yahoo!ショッピング)
<マーケットプレイス型>
マーケットプレイス型は、出品者が商品のみをモールに出品する形態です。代表例はAmazonです。商品データはモール側が管理しており、商品が購入されると出品者に購入データが送信されるので、それに応じて発送作業を行うという仕組みになっています。
商品を出品するだけなので、手軽に始めやすいのが利点ですが、どの出品者から購入したかは意識されにくい傾向があるため、リピーターが作りにくいという欠点があります。
▼マーケットプレイス型の代表例
・Amazon
アマゾンジャパン株式会社が運営するマーケットプレイス型のECサイトです。商品単位で出品するため、商品数が少なかったり、小規模な企業であったりしても気軽に始めることができます。月間利用者数が日本最大で、業界トップクラスの集客力があります。
Amazonの公式サイトはこちら<テナント型>
テナント型は、現実のショッピングモールや商店街と同様に、モール内に店舗を出店する形態です。代表例として楽天市場とYahoo!ショッピングがあげられます。出店料を支払うことで出店することができます。管理業務は出店者側が行う必要がありますが、店舗ごとに独自性を出すことができるため、マーケティングを上手く行うことでリピート率向上も期待できます。
▼テナント型の代表例
・楽天市場
楽天株式会社が運営するテナント型のECサイトです。Amazonに次ぐ月間利用者数誇っています。出店料や手数料がかかりますが、1億1,140万以上いる会員へ向けて商売ができ、楽天スーパーセールなどのイベントを利用することで短期的な売上アップも可能です。
・Yahoo!ショッピング
ヤフー株式会社が運営するテナント型ECサイトです。出店料と月額使用料が無料で出店しやすくなっています。コストを抑えたい企業が多く出店しているため、他モールに比べて店舗への集客力は弱いです。
自社ECとモール型ECのメリット・デメリット
自社ECのメリット
- 利益率が高い
自社ECの場合は、出店料や販売手数料などのコストは発生しません。ASPやオープンソースなど予算に合わせた運用方法を選ぶことで初期費用や運営費用を抑えることができます。モール型ECと異なり、価格競争になる可能性も低く、長期的に見ると高い利益を確保することができます。 - ブランディングしやすい
デザインや設計に制限がないため、ブランドイメージに沿ったサイトを構築することができれば自社や商品について顧客にしっかりとアピールすることができます。顧客情報も自社で管理できるため、サイトを分析して改善を重ねたり、顧客にあわせた測範活動を行ったりすることでリピートを増やすことも可能です。
自社ECのデメリット
- 集客の難易度が高い
自社ECでは、プロモーション活動を自社で行う必要があります。ただサイトを立ち上げるだけでは売上をあげることは難しいです。SEO対策や質の高いコンテンツを作ったり、必要に応じて有料広告を使ったりするなど、長期的に取り組むことが大切です。 - サイト構築・運営が大変
自由度が高い分、技術的な知識やWEBマーケティングのノウハウが必要とされます。どうやって集客を増やしていくか、どうやってブランディングしていくか、といった、長期的なビジョンと主体性を持って取り組むことが求められます。
モール型ECのメリット
- 集客率が高い
モール型ECの最大のメリットは、集客力があることです。人が集まっている場所に出品・出店できるため、自社ECに比べて集客の負担がありません。Amazonや楽天といったブランドが信頼度を高めているので、店舗自体の知名度が低くても、顧客が購入しやすくなります。 - 初心者でも利用しやすい
集積ノウハウが蓄積されていない場合、利用しやすいのがモール型ECです。既に準備されているCMSにしたがって作成することで、専門的な知識がなくても、短時間で簡単にECサイトを構築することができます。
モール型ECのデメリット
- サービス使用料がかかる
モールにもよりますが、出店料をはじめとして、運営費、広告料、売上に応じたロイヤリティなどの費用が発生します。このような利用料金は、大きなモールになるほど高額になる傾向があります。 - ブランディングしにくい
モール型ECで買い物をすると、実際に商品を出している店舗ではなく、“「Amazon」や「楽天」で購入した”という印象になりがちです。構築環境に制限があるなかでも、ページの見せ方などを工夫しオリジナリティを出すことで、認知度を上げていく必要があります。
自社に合ったECサイトの運営方法を選ぼう!
自社ECとモール型ECは、それぞれにメリット・デメリットがあり、店舗によってどちらを選択するのかをしっかり検討する必要があります。どちらにするか迷ったときには、「何を売るのか」「運営方針」「両方を運営する」といった視点から考えてみましょう。
- 何を売るのかで考える
消耗品や類似商品が多い商品、まだ市場に認知されていない商品は、買い手が多いモール型ECのほうが、商品の露出が増える可能性があります。逆に、ブランド品や既に人気のある商品、専門用品などは、顧客が探し当てて購入する可能性が高いため、自社ECを立ち上げてしっかりブランディングを行ったほうが良いと考えられます。どういったものを売るのか、販売する商品の現状から見極めてみましょう。 - 運営方針で考える
決まった予算の中で、自社のECサイト経験値に合ったサービスはどれなのかを考えましょう。また、短期的に売上を出したいのか、長期的にブランドを確立していきたいのか、といった今後の事業展開もふまえて検討する必要があります。 - 両方を運営することを考える
リピート客や優良顧客を増やすことに向いている自社ECと、新規顧客の獲得に向いているモール型ECの両方を同時に運営すれば、コストは増えますがその分、集客力を高めることができます。どちらかのECサイトにトラブルが生じた場合のリスクヘッジすることも可能です。
また、時期によって運用方法を変えることも可能です。認知度が低い開業時はモール型ECの集客力を活用し、ブランドや商品が認知されるようになった頃合いで自社ECに移行するという戦略を取れば、それぞれのメリットを活かしてビジネス展開することができます。
違いをきちんと理解し、自身のニーズに合った運営方法を選びましょう。
弊社では、ECサイト開発・運営も行っております。
ECサイトを立ち上げたい方、ECシステムの乗換を検討している方、企業様などお気軽にお問い合わせください。